ガンダム Gのレコンギスタ 第十三話感想 呉越同舟茶番劇

第13話「月から来た者」

 月から来た艦隊を相手に地球側の各陣営が右往左往しつつも共同戦線を張って対抗しようとする話、ではあるのだが実際にはMS戦は現場の独断気味で、結局はザンクトポルトで普通に高官同士が会談。「地球側が連合して共闘」という触れ込みだったが、少年漫画的な燃える展開ではなくお互いがお互いを都合良く利用してやろうと腹を探り合う展開であったのは流石のGレコ、と言った所か。



 前回「遂に謎の「宇宙からの脅威」が姿を現した!」という所で終わった訳だが、今話は意外にもその「宇宙からの脅威」である所の月艦隊側からの視点で始まる。これまでの描写から月勢力が地球に比べて圧倒的な軍事力科学力を持つかのようなイメージもあったが、前回終わりのガビアル狙撃は脅すだけの命令が誤って伝わったものらしく、練度の低さが露わになる。別に月にいるからといって特別人間が賢い訳ではない、という事か。

 ザンクトポルトの中では月艦隊に対する対応を巡ってお偉いさん方が引き続き小競り合い。ウィルミットがタブーを連呼して戦争を阻止しようとするのは、正しい平和主義にも見えるが、教義に縛られて思考停止しているようにも見える。相変わらずそこに価値判断は下されない。クンパ大佐もまた敵対行動を諌めるが、そこはウィルミットと違い「何か」を知っている節がある。
 大人達がそうこう言い争っている横で、少年少女組はMSで外に出ようと行動。言い争いで足が止まっている暇があるなら動いてみましょう、という訳だ。またそれに対してクンパ大佐が

「青少年に期待するか」

とポツリ。事態がどう動くのが彼にとって一番好都合なのかは分からないが、とにもかくにもまだまだ底が見えない男だ。

 で、当の青少年達はといえば、月勢力に対抗する為、キャピタル・アーミィらと共同戦線を張りましょう、という事になる。それでベルリらはMSでガランデンへと向かうのだが、ここでそれまで敵だったガランデンへと素直に乗り込む事に二の足を踏むベルリ達の中で真っ先に先陣を切ったのが意外にもケルベス中尉。MSパイロット達の中では年長者なので保護者的な振る舞いが多いが、地味に大胆な性格をしている。


 またこのシーンではGセルフフォトンバッテリーの補給をしているのもメカ的には重要ポイントだ。

 一方ベルリ達を受け入れるガランデンの方でも敵のパイロットを収容する事に対して艦長は微妙に難色を示している。艦長殿は「謎の艦隊」がトワサンガから来た事をにわかには信じられない様子だ。そんな艦長の態度に対してマスクは「ゴンドワンの方には信じられないでしょうが」と言う。月の人間の存在そのものがキャピタルの人間に比べてゴンドワンアメリアには現実味が薄いのだろう。
 ところで、そもそもガランデンの艦長がゴンドワンの人間である事自体がこのシーンで初めて明らかになったのだが、名目上は自衛組織であるはずのキャピタル・アーミィが、大陸間戦争中の片方の国の人間を心臓戦艦の艦長に据えているというのは、なかなかまたキナ臭さが漂う話だ。

 ベルリらの到着を向かえるマスクとバララ。ここでマスクは

「敵を敵にぶつけられるチャンスだ」

と実に悪役な台詞。これまでの敵味方が新たな共通の敵を前に共闘、という少年漫画的に燃えるシチュエーションになりそうな所だが、そこは腹芸の富野アニメ、表向きは共同戦線を張ると言っておきながら、腹の底では相手を上手く利用する事を考えている、という訳だ。

 ガランデンに着艦したベルリ達はここでマニィと再会。彼らは再会を喜ぶが、マニィはマスクの事を隠したままでいるのに若干の後ろめたさを感じている様子。しかしマスクの方はここでも相変わらず全力で「マスク」をやっている。良くも悪くも元気で楽しそうに生きているGレコのキャラクター達だが、マニィだけは色んな感情に板挟みで辛そうだ。彼女はこれからどうなっていくのやら。

 ベルリとマスクらは「元気で楽しそう」な連中の筆頭とも言うべきクリム君と合流して、ここに地球連合部隊結成、という流れ。しかしやはり敵味方共闘と言っても燃える展開にはならずに、ここでも相手を利用し合う腹芸が炸裂。白旗を掲げて降参した振りで旗艦に近づく作戦を提案するクリムに、それを「流石天才!」とおだてて称賛するマスク。当然実際の心の内では小馬鹿にしきっているに違いない。おだてられたクリム君の方も、馬鹿にされたのが分かっているのかいないのか、こちらもマスクらに対して「諸君の協力がなければ実行する勇気がわかなかった」とおだて返す。胡散臭さはドンドンと加速してゆく。



 で、地球連合のMS部隊は白旗を掲げながら月艦隊へと接近するが、

ロックパイ「白旗!? 降参したって合図じゃないか!」
 ターボ 「前もって知らせもない使者などはバカだろう。追い払え!」
 ノウトゥ「非公式の動きを見せるものは撃墜しておけ」

という訳で、見破られる以前の問題。当たり前のように攻撃を喰らう。クリムは前のシーンにて月艦隊を「戦争慣れしていない連中」と馬鹿にしていたが、戦争慣れしていないのは地球側も結局同じで、所詮素人の浅知恵だったという訳だ。という訳でMS戦開始。
 と思ったら、ちょっと小競り合ったと思ったら白旗作戦が機能しなかった段階で即撤退。今話のMS戦はこれで終了で、かなりアッサリ。元々必要無い所にオマケでねじ込んだという事か? ただオマケとは言え、敵味方のMSが揃って飛んで行くカットの呉越同舟感は実に面白い。

 月の交渉団がザンクトポルトに入り、大聖堂で高官同士の会談が始まる。ここでクンパ大佐がそそくさと部屋から出て行ったが、やはり彼は元々月側と何らか繋がりがあったという事か?

 大人達が会談を始める一方でMSパイロットの少年少女達はまたも呉越同舟で、全員揃ってエレベーターに同席。勢力がしっちゃかめっちゃかで誰が敵で誰が味方か曖昧なGレコだが、その勢力関係の複雑さが凝集されたかのようなシーンだ。

 しかしこの距離でヘルメットまで脱いだマスクの正体に気付かないベルリは鈍感にも程がある。ラジオでスタッフが語るには、このシーンではベルリ君はお姉さん方に囲まれているというシチュエーションに浮き足だっていてマスクにまで気が回らなかったとの事。面白いけどじゃあノレドはどうなんだよw

 で、少年少女達が大聖堂に入ると、大人達はこれまた腹芸でもって「自分達が軍事力を持つのは正当だ」という主張をそれぞれぶつけている。そこにクリムが横からカットイン。

「貴官たちはアメリアが敵対しているゴンドワンにそそのかされて、地球に攻め込むのだ! そして、地球に移民をするレコンギスタを実行する! それが本心だよなあ!」

ここで何と意外にも番組タイトルの「レコンギスタ」が劇中キャラの口から発声。月の民の地球移民作戦、というと当然連想されるのは∀ガンダムだが、果たして…。

 このシーンではさらに「レイハントン家の生き残り」だ「密航者」だなど、他にも今後のストーリーに深く関わりそうな単語がぽろぽろ零れるが、ハッキリした事は何とも分からず。とにもかくにも大人達の建前で虚飾された利害争い主導権争いの中に、お調子者の若者がぶっちゃけ話で場を引っ掻き回すという、ある意味で典型的な「大人達と若者達」の構図が演出される。
 そしてそんな空気の大聖堂からベルリらは退席するが、そこでさらに姫さまが先程のクリム君に負けないレベルで「若者」らしい発言を飛ばす。折角なので一連の台詞を列記。

アイーダメガファウナトワサンガに行くと伝えて、支度をさせてください」
ルアン 「はあ!?」
ケルベス「ええ!?」
ベルリ 「本気ですか!?」
アイーダ「あの人達だけの話で何がわかります?
     トワサンガって所に行ってみるしかないじゃありませんか」
ルアン 「ホントに月の裏側にあるんですか? それ?」
アイーダ「だから確かめにいくんでしょ!」

このシーンではアイーダ姫さまの台詞に応じて高揚感を感じさせるBGMが鳴りはじめ、空を指差す姫さまの動きの勢いのままに画面は空へ上がり、宇宙に浮かぶ月を映す。そこで今話は終了でEDへと移行。



 大人達のキナ臭い腹の探り合いのキリキリ戦争ムードが極まったタイミングで、姫さまの一声で一気に空気は冒険活劇モードへと転換したラストシーン。EDテーマ「Gの閃光」の元気一杯な歌詞とメロディに繋げるラストカットとしては1話以来のマッチングでは無いだろうか。
 このシーンの演出を考えると、Gレコが示す方向性というのも薄ら見えてきそうな…。とにもかくにも次回に続く。 

 という訳で、意外(?)にも地球人とさして印象の変わらない月の面々を目撃して、月に行って「自分の目で確かめ」る事を決意する姫さまの姿を描いて今話は終了。次回は次回でまたも月勢力と小競り合いの予感だが、予告のベルリ君は現実を直視せよと画面の我々に説教をかます。二次元の存在がちょこざいなと思いつつも、目を逸らす事なんて出来そうも無いので次回も見る!のだ。