Gレコが失敗した理由と、今後Gレコを46年語り継ぐために

まあ何か知らないんだけど、巷ではGレコ失敗してるらしいじゃないっすか富野監督が勘違いして酔っぱらって道を違えたとか言って話題になってるらしいじゃないっすか。
まーなんかあーいうのに突っ掛かるのもファンとしては狭量かなあってのもあるので別にどうこう言う必要も無いんですけど、まあそれは別にしてもこのタイミングで何らか言っておきたい事、ちょっくらちゃんとまとめておいた方が良いなと思ったので、まあ筆が滑るままに適当に書きます。

【Gレコは失敗作か?】

 えーとねえ、まず何から話そうかなって考えた時にとりあえずここハッキリさせとこうと思ったのは「Gレコは失敗したのか?」って問題についてで、いやそもそもアニメ作品に失敗成功なんてそんなんハッキリさせれるようなモンじゃねえじゃんってのが正解なんだけど、まあ限定的に失敗成功ラインを定義付けすれば少なくともその範疇では議論できるのでそうやって議論します。すなわちここでハッキリさせるのは答えでなく問いの方です。

 で、作品としての成功失敗ラインなんてまともに言えたもんじゃねえのは当たり前なので当然ここは言い換える訳ですよ。「Gレコは商業的に失敗したのか?」と。
 はい「商業的」なら話は簡単ですねお金という人間社会の絶対的価値基準によって厳格に数値化可能だやったね! アホか。んなわきゃ無い。大体初代ガンダムだってリアタイは数字がとれねえ数字がとれねえって打ち切り喰らってんじゃないかバーカバーカ。キングゲイナーとか売れなかった売れなかったって平気で言うけどさー、あの当時のWOWOWスクランブル枠で10年後にBD-BOX出て舞台イベントまで成立しちゃうアニメなんて他にどんだけありました?とかいう話ですよ。
 数字なんて世の中の動向1つでいくらでも変わるんだよ。将来的な商業価値なんて円盤初週売り上げどころか単年度売り上げですら分かるわきゃないんだよ。大体円盤なんてグッズの1つに過ぎない事を分かってない。Gレコはグリモアたんのおかげでエルフ・ブルックのプラモ出てくれるしバンチャの定額見放題リストだと月別再生数ランキングでGBFトライを上回って2位につけてんだってばよ!











 とかね、いろいろ強がってはみても所詮強がりですよジョナサン流の強がりですよごめんジョナサンはこんな事言わないからあでのい流の強がりですよ。
 俺はさあ、もうGレコが爆売れで覇権覇権って騒がれまくって、調子に乗った禿爺様がアニメ雑誌にチヤホヤされまくって誌面に満面のドヤ顔スマイルの写真で載って、インタビューには「僕自身久しぶりのTVシリーズだったので設定を巧く活かし切れなかった悔しさがあります」とかツンデレコメントほざいてる世界が見たかったんだよクソがああ!! マジで去年の夏に先行上映の映画館で公開初日に3回ぶっ続けで見た時はマジでそんな世界来ちゃうんじゃね!?これヤバいんじゃね!!?ってはしゃぎまくりでしたよ。
 もう四六時中興奮状態で10数年来の友人にまで久々に電話かけて「これはヤバい」とか吹かしまくりましたね! どんくらい吹かしてたかって、「どのくらい売れて欲しいの?」って親切にも聞いてきた友人にドヤ顔で「まどマギが吹き飛ぶくらい」って答えるくらいっすよチクショウがあ!!
 まあだからね、そりゃもうそんな妄想世界基準じゃ失敗も失敗ですよ! そんな無茶な成功ラインがあるか馬鹿って言われそうだけど、少なくともその定義なら失敗にならざるを得ないんですよ。だからGレコは少なくとも現時点では失敗作です! 断言です!!



 いやゴメン正直に言うわ。要はこういうちょっと煽り気味な記事タイトルつけたかったから一旦「Gレコは失敗した!」っていう所から無理矢理でもスタートさせてみてるだけなんだわ。まあ実際途中脱落した人は大量にいるみたいだし? 視聴率も相当下降しちゃってるらしいし? まあそこら辺の事実関係をもってまずは「失敗」という事にしておいて、そっから話始めさせてくれませんかね。

【Gレコが失敗した理由その1・理解できない】

 いやもうコレに尽きるでしょw 大体不親切なんだよイキナリ始まった瞬間から劇中用語を説明も無しにポンポンポンポンと。第一話で出てきた「空気と水の球、チェック!」「チェック!」とかさ、実際に水の球が出て来たのなんて5話ですよ。そっからさらに空気と水の球がパイロットスーツの背中にセットされてるのが明かされたのが15話ですよ。ふざけているのか。しかも別に引っ張ったからって特に意味のある内容でも何でもねえじゃんそもそも謎ですらねえ脇設定に過ぎない訳ですよ。
 もうね、徹頭徹尾順番通りに出て来てくれない。設定もキャラもMSも。ミック・ジャックさんとか一体何なんだ何の理由で5話のあのタイミングで初登場だったんだ。新キャラで重要人物かと思いきや一切活躍せずに、次に現れたのは8話ですよ。しかも
 ヘ カ テ ー に 乗 っ て な い !
折角5話でお褒め頂いたヘカテーさんの勇姿が拝めるのは11話からですよ。じゃあ何で5話で出て来たんだ少しは視聴者の記憶容量に配慮しろやあ!
 しかも、何ですか、あのポンコツ姫さま。彼女が3話で何か知らんけど別室からベルリ君の前に現れる時に謎のダンス踊ってらっしゃったじゃないですか。もうね、当たり前ですけど超困惑。何だアレ何の為に華麗なステップをお踏みになられたんだアイーダ姫。この大いなる謎に立ち向かったのが坂井哲也さんですよ! 坂井さんアイーダのダンスの謎に対してマジ素晴らしい考察記事をお書きになられてましてね、いやそりゃもう当時私なんかは感動した訳ですよ。「おお! なるほど! これは面白い!」っつーてね。 で、最新話まで見た皆さんはもうご存知ですね。

 この女ステップ踏むのが癖なだけだ!

 もうね、あの坂井さんの挑戦は一体何だったんだって話ですよ。視聴者に無駄な努力を強いた上に努力の無駄さを突きつけるアニメ、ガンダムGのレコンギスタ! 正気か…。
(いやでも「アイーダはベルリに元気な自分をこれ見よがしに見せつけたかった」という論旨自体は現状でも全然通用するし、非常に質の高い記事だと思います)

 でもね、だからこそだと思うんですよ。
 世の中基本的にそんなもんじゃないですか。テメエの前に現れる人間みんながみんなテメエの為に自己紹介しながら登場してくれると思うなよって話ですよ。この雑多さが「世界」って奴じゃないですか。それで設定勘違いしたって、それはそれで良いじゃん。皆世の中の全てを正確に理解してる訳じゃないし、誰だって「実は昔から勘違いしてたんだけど」って事の1つや2つあるでしょ? そーゆーので良いんじゃないかなとか思う訳ですよ。

(ちょっと自分でもテンションおかしくなってるのでここらで一旦クールダウン)

【Gレコが失敗した理由その2・共感できない】

 とりあえずさ、Gレコの批判意見の中で最も多いのの1つがまあアレでしょ。「ベルリが何考えてんだか分かんない」とかそういう奴だよね。何考えてんのか分かんねえ主人公の行動を追っかけるのがストレスな人が非常に多い、と。まあ分からんでもない。ただねえ、「ベルリの行動が理解できない」ってのは、えーとある意味では間違いじゃないんだけど、多分微妙に違うんだよね。というのも、ベルリの行動原理を何らか理屈づけようと思えば実はいくらでも出来るんですよ。
 どういう事かって言ったらさ、ひょっとしたらベルリはアイーダに本気で心底惚れて出来るだけ一緒にいようとしているだけなのかも知れないし、ひょっとしたらキャピタル・ガード候補生である事を凄く誇りに思ってるからタブー破りをしているアーミィが許せないのかも知れない。そういう風に勝手に理屈付けようと思えば実は結構難しくないんだと思うのよあの少年。だから実際には「理解できない」ではなくて、「正解が分からない」というのが正しい表現じぇねーかな、と。

 で、そうやってベルリ君の動機が伏せられているのはかなり意図的であろうというのは、富野発言が無い以上は見た側の予想でしかないわけだけど、それなりに自信もって断言しちゃって良いとは思う。
 だってベルリに分かりやすいモチベーション持たせようって思ったらそんなんいくらでも出来るじゃん。海賊船行く前に分かりやすくアーミィに反感持つようなシーン追加して、常々「あんな奴らにタワーを任せてられない!」とか繰り返し言わせればオッケーですよ。アイーダへの恋心とかだって、そんなんもっと分かりやすく「あーこの子、アイーダが気になって仕方無いんだ」てシーンは足そうと思えばいくらでも足せる訳よ。でもそこを一切外形的には見せずに、アイーダのピンチを助けに出撃する直前に「恋を知ったんだ」とボソッとだけ言わす。でもそれが本気で命賭ける程の恋心なのか、シチュエーションの高揚感に調子のって格好つけただけなのかまでは明言されない。俺らが何となく想像するしかない。

 そこで副読本としてフル活用したいのが漫画版Gレコで、漫画版では割とハッキリと分かりやすくベルリ君の行動の理由を示唆するようなシーンがちょいちょい挿入されてる。Gレコ漫画版はアレ結構チャレンジングなコミカライズをやってらしまして、大胆にもアニメ本編の描写を半分くらいサクッと削った上で、残りの半分を理解しやすく共感しやすいように1.5倍くらいに描写膨らまして描いてやがるんですよ。
 例をいくつか挙げとく。まずは1コ目。

こちらは本編では1話冒頭のカットシーのシーンとベルリ登場シーンとの間に当たるシーン。宇宙実習日の朝に一緒に登校するベルリとルイン。当然本編にはこんなシーン無し。いきなり「教官に怒られてる」という途中のシーンから始まる。
 次に2つ目。

こちらは3話で朝起きたベルリがクンパ大佐のもとへと向かう為に母の部屋を出るシーン。
 この2シーン以外にもいくつも追加シーンや追加台詞はそこかしこにあって、それによって漫画版のベルリ君は「母の期待に応えよう、母を助けようと常々頑張ってる」というキャラクターとして非常に理解しやすくなってる。わかりやすい! 凄い!

 要は漫画版はちゃんとベルリの内心に対して「正解」を与えている事になってるんだよね。でもそれはあくまで作者である太田氏が見出した正解の1つに過ぎなくって、必ずしもそれが唯一の答えではない。「キャラクターとして非常に理解しやすくなってる」と書きはしたけど、これ言い換えるとキャラが固定されてしまってるとも言えるんですよ。
 で、アニメのGレコってのはそういう事はしない。何が正解なのか分からないままにとりあえずストーリーだけはドンドン進む。重ねて言うけどアニメのベルリ君の行動の動機はかなり意図的に伏せられて描かれてる。それどういう事かって言ったらさあ、要はそもそもGレコは主人公への共感モデルで物語作ってないんだよ。

 でもさあ世の中って元々そういうモンじゃないっすか? 皆目の前で喋ってる知人の言葉がどこまで真実なのか分からないままに生きてるんじゃないですか? そこを想像しながら生きていくのが人間なんじゃないですか? 

 だからGレコもさ、無理に共感なんてする必要ないし、物語が主人公に共感できないからって駄目かどうかなんて分かんない訳ですよ。いやそこで「俺は共感できないなら無理!」って言う人がいるなら、まあそりゃしゃあない。それは個人の感性だ。でもとりあえず、Gレコをどう楽しんで良いか分からくてモヤモヤしてる人は、一旦「そもそも主人公への共感型の物語ではない」って事をちょっと意識してみると良いんじゃないかな?と思う訳です。その上で「自分は共感型の物語でなきゃ受け付けない」って思うのなら仕方無いけど、一旦「そもそも共感する必要が無いんだ」って思って見てみると、少しGレコの印象が変わるんじゃないかなあって期待する訳です。そんで何かよう分からんベルリ君の言動に対して、自分の想像力でもって自分なりの正解を何となく見出して楽しむと良いんでないかなと思う訳です。

【Gレコが失敗した理由その3・どう受け止めて良いか分からない】

 もう一点Gレコがヒッジョーに厄介な点があって、それが何かって言うと「価値判断を与えてくれない」という事。
 例えば∀ではガンダムが洗濯機になるシーンがあったよね。あのシーンは凄く感動的なんだけど、何故感動的かと言えば「ガンダムみたいな人殺しの道具だって、こんなふうにだって使えるんだ!」というメッセイージがハッキリと描かれているからというのがある。要はザックリ言うと、ちゃんとあのシーンでは視聴者に「ここは道具だって人次第、という実例に感動する所ですよ」というガイドが敷いてあるんですよね。(や、ここに異論ある人もいるのかも知れんがそこは置いといて)
 で、実はGレコにも似たようなシーンはいくつかあって、2話のラストでカーヒルの命を奪ったビームライフルを、3話冒頭でラライヤがその銃身を枕にしてすやすや眠っている。6話ではデレンセンを殺した直後に、デレンセンとの戦闘でチャージしたリフレクターパックのエネルギーを使ってクリムの命を救っている。でもそこに何か「感動的」な演出は無く、あくまで淡々と事実を描いているといった向きがある。恩師を殺した武器で敵国(では厳密にはないけど)の兵士の命を救う。そこに我々視聴者は感動すれば良いのか皮肉を感じれば良いのか、このアニメはハッキリと教えてくれない。
 これは他のいろんな要素にしても同じで、例えばスコード教の信者設定にしても、教義によって平和主義を貫けるという正の面と、教義により思考が硬直化して現実の変化を受け入れられない負の面とが、極めてフラットに淡々と描かれる。Gレコでは今展開されているドラマに我々はポジティブな印象を受ければ良いのか、ネガティブな印象を受ければ良いのかを明示してくれない。どう受け止めるべきなのかは自分達で判断するしかない。

 これは見てる側としたらかなり居心地の悪さを感じざるを得ない面がある。ただ、価値判断が明示されない事こそが逆に「自分で判断できるようになれ」という強固なメッセージであろうと思うのだ。そこに私なんかは本気で感動してしまうのだけど。(信者脳? うるせーよw)
 大体さあ、キャッチコピーがさ、「自分の目で確かめろ!」だった訳じゃん。ね? そういう事なんだよ。それを分かるんだよ!

 まあね、さっきも言ったけどこういう作風が受け入れられにくいと言うなら、それはもうしょうがない。だって現にウケてないんだもん。そこで「ウケない世間が悪い」とか言い出したらそれこそ何が正しくて何が間違ってるかわけわかんないって話ですよ。談志師匠も「現実は正解なんだ」って言ってた。「リアルは地獄」って井荻も言ってるし。
 という訳でGレコは失敗作です!残念! 言い切っちゃえば楽になるよね。でもね、こういう作風だからこそ、俺はこれから何十年かけてでも語り継いでいく価値があるんじゃないかって思う訳ですよ。今Gレコつまんねえつまんねえ富野もう終わったなとか言ってる人だって、そのつまんないGレコのどっかワンシーンが何か記憶に残ったまんまで、1年後だか10年後だかにふと「ああ、あのシーンってこういう事だったんかな?」とか思ってくれるかも知れないじゃねえっすか。禿だって言ってんンじゃねえか「本気で喋れば内容は伝わらなくても、本気で喋ってる事だけは伝わる」って。そういう事ですよ。

 まあなのでね、これTwitterの方ではもう何度も言ってますけど、Gレコファン各位は向こう何十年かかけて、ゆっくりとこのアニメが受け入れられるように頑張りましょうや、と思う訳です。言いたい事は多分そんだけ。以上。


(てーか「その2」の部分に漫画版入れ込んだけど、実際には「その1」「その3」に関しても漫画版は受け取りやすいように編集され直してるんだよね。いやマジで漫画版オススメだよ。スゲー挑戦的なコミカライズしてる。)
(ちなみにタイトルの46年ってのは今の俺が今の富野と同じ歳になるまでの時間です。)



参考
Gレコは、富野監督が基本的な勘違いと、設定に酔って道を間違えた作品 - Togetterまとめ

誰が何と言おうが、富野とGレコには富野らしくいてほしい。しかしそれも錯覚か? - 玖足手帖-アニメ&創作-