結局Gレコとは何だったのか? ―Gのレコンギスタ総括― その3「非・相互理解」

という訳でその1その2に引き続きのその3。

【Gレコとは相互理解の物語ではなかったのだ】

 えー、3節目でいきなり否定形から入る訳ですが(笑)。このテーマについてはイロイロ考え直す余地もあるとは思うのだけど、少なくともGレコは「争い合っていた人と人とが分かり合う事で困難を乗り越える物語」ではなかった事だけは確かだと思う。

 Gレコでは人と人との断絶は保存されたままの傾向が多く、その最たるものがベルリとルインの関係だ。ルインの役所ってのは要するに「主人公の良き先輩だったはずのキャラが、実は内心では主人公に対する憎悪が渦巻いていて、仮面を被って正体を隠しながらライバルとして立ちはだかる」というものですよね。それ自体は別にそこまで珍しいものではないのだけど、この構図のライバル関係が、結局特に対話する事無く終わった例というのは古今東西のアニメの中でもちょっと相当珍しいのでないかと思う。で、さらにGレコが特殊なのは、そうやって対話無しに結局断絶したまま終わった事に対して、あまり否定的に描いてない、という点。
 普通マスクみたいなパターンのライバルキャラなら、大体は「主人公とライバルが対話を通じて分かり合う」か、そうでなければ「最後までライバルは憎しみを捨てる事が出来ず破滅し、主人公がその姿に涙する」みたいな展開のどっちかだと思うんですよ。で、それは「人と人とが分かり合える素晴らしさ」を描くか「人と人とが分かり合えない悲しさ」を描くかのどっちかな訳なんだけど、Gレコはそのどちらでもなかった。
 相互理解がどうこう以前にベルリの方はマスクの正体がルインである事も知らないし、それどころかそもそもカバカーリーに乗ってるのがマスクだとも知らずじまい。ルインの方も結局最後までベルリと対話しようとはせず、最後も恨みの声を叫んだだけ。かと思えばエンディングではいつの間にやら憑き物でも落ちたかのような空気で彼女とイチャツイてハッピーエンドですよ、と。ストーリーテリングの定石に喧嘩売ってるかのような展開なのだけど、不思議とそれが気持ち良い。

 他にGレコの「相互理解」の描き方がよく表れているなと思うのが17話の「皆で宇宙のお掃除」シーン。このシーンではさっきまで戦争をしていた敵味方が、突如協力して宇宙のゴミ掃除をする、という展開で、一見逆シャアばりの「人と人とが分かり合って奇跡を起こす」的なテーマ性を見出してしまいそうな所だが、実際にはむしろ真逆と言える内容。それに関しては17話感想である程度詳しく書いたつもりなので参照されたし。

 で、このお題でもう1つ言及せんにゃイカンやろ、というのがベルリとウィルミットの「親子関係」。「親子の断絶」と言うと富野アニメを語る時には外せない項目な訳ですが、ウィルミットは富野アニメ恒例のクズ親という訳ではなかったが、それでもそこに断絶はキッチリ描かれていたと思う。
 10話のラストシーンでベルリはアイーダに「母もあそこ(メガファウナ)に帰る事を許してくれます」と言うが、その直後の11話ではウィルミットの方がベルリが宇宙に上がって来た事を否定する。大きな旅の第一歩を歩み出すベルリが「母さんも分かってくれるはず」と思っているのに対し、ウィルミットの方は「ベルリは我が家で大人しく待っててくれるはず」と我が子の自立を認めない。
 で更にこの2人の断絶が顕著なのが22話「地球圏再会」。金星までの遠い旅から戻って来たベルリは、未だにスコード教のタブーに固執して、外世界を見て来た自分には興味を示さない母親の姿に、あからさまに失望する。そしてその上で、別にベルリはウィルミットに対して何かを伝えようとも、何かを働きかけようともしない。ただただ「自分達は好きにやらせてもらおう」といったふうに黙って部屋を出て行くだけ。
 そこには明らかに親と子の「分かり合えなさ」が存在するのだが、その上でベルリは「良い母親だ」と言う。分かり合えない事を認めながら、それで上手く親子をやっていけるだろう事を示す。

 Gレコは確かに「争い合っていた人と人とが分かり合う事で困難を乗り越える物語」でなかったのだけど、その一方で「人と人とが分かり合えず、憎しみと不幸を撒き散らす物語」でも無かった。相互理解の物語では無かったが、相互理解を否定する為の物語でも無かった。「人間なんて所詮分かり合えないよ」という認識を殊更メッセージとして発する訳でなく、当然の前提として描きながらその向こうを描こうとしていたように思う。
 そしてそれこそが「リアルは地獄」「元気のG」なのだろうな、と。

とりあえず現時点ではGレコ全体に対する総括はこんな感じ。一応もう一項目くらい考えてはいたのだけど、ちょっと上手くまとまらなかったのでここで打ち止め。
とにもかくにも咀嚼するのにヒジョーに厄介なアニメであった事は間違いない。各話感想もまだ途中で延々放置のままだし、これからもマイペースに頑張っていきます。