ガンダム Gのレコンギスタ 第五話感想その1

第五話「敵はキャピタルアーミィ

 今話も前話と大体のお話の筋は変わらず、ベルリらの救出を目的(名目)として海賊艦メガファウナに攻撃を仕掛けて来たキャピタルアーミィを、何やかんやあって海賊らと協力しながらGセルフで撃退しましたよ、というお話。5話まで来たが、基本的には立場や戦場が異なるだけで、1話から一貫して「襲って来た敵を撃退」という基本構造のまま1話完結を繰り返している。1話1話の基本構造自体は実にシンプルなアニメなのだ。

 冒頭はベルリの母、ウィルミット・ゼナムが着々と軍隊編成されていくキャピタル全体に対してのボヤキから始まる。法王への謁見やアーミィ色に塗られていくクラウンを、「思い返しながら」ボヤくというのがポイントで、実際の描写は省いてしまうのが情報圧縮の妙技だ。
 また、このシーンにおけるウィルミットの

「私のクラウンはアーミィ・カラーに塗られてしまっているのだぞ」

という台詞が個人的になかなか赴き深い。

 彼女はクンパ大佐らが主導する軍備増強やタブー破りに対して反対の意を示してはいるが、上記の台詞に関しては、単なる平和主義者としての意見と言うより、もっと俗人的な「自分の仕事の領分を別の奴らに好き勝手やられる」事に対する感情的な嫌悪感が感じられる。

 続いてキャピタル側の新MSエルフ・ブルックおよび、そのパイロットである謎の男()マスクの登場。マスクの存在自体は公式HPなどでも以前から話題となっていたが、何の脈絡も無くイキナリ登場させるのにはちょっとビックリ。ここはインパクト重視で、諸々の経緯は後々描写する予定という訳か。きっちりチアガールの1人に「ださーい」と言われている事に何故か画面の前で安心する。

 しかしマスクのインパクトが笑いを誘うはずのこの一連のシーンでゾッとさせられるのが、お馴染みチアガール達の「応援」だ。彼女らが何を応援しているのかと言えば、

「世界を守れキャピタル・アーミィ!」

という訳だ。

 彼女らの「応援」は所謂プロパガンダ以外の何物でもないはずなのだが、画面の明るさやBGM、何よりチアガールらの笑顔のせいで、そうしたキナ臭さ、気持ち悪さはあまり感じない。しかし気持ち悪さを感じない事が、逆に恐ろしい程に「気持ち悪い」。このアニメではキャラクター達だけでなく、我々視聴者達まで気を抜くと緊迫感の無さに騙されそうになってしまう。
 前話でもこのシーン同様のMS出撃のお見送りシーンが出て来たが、Gレコの誰一人現実感ないままに何となく戦争状況が徐々に構築されていっている薄ら寒さは凄い。

 視点は海賊側に移り、ここで今話の海賊側の新キャラであるミック・ジャックと新MSヘカテーが登場。が、今話では彼女らは顔見せだけで特に活躍は無し(海賊とアメリア軍の繋がりの説明役ではあったとは言えるか?)。実はGレコでは今の所唯一の「金髪さん」な訳だが、初登場シーンでは物語における重要度が読みづらいのが富野アニメの常なので、今後どこまで活躍するのかは何とも言えない所。

 そんなミック・ジャックさんにちょっと敵対意識を向けるのがノレドちゃん。既にアイーダにベルリを取られかかっている(と思っている)ノレドとしては、美人な新キャラの登場には勢い敵意を向けたくなってしまうのだろう。ウィルミットが冒頭ではクラウンに対して強い縄張り意識を見せたのだが、ノレドにとってはベルリこそが自分の守るべき「縄張り」な訳だ。

 戦況のミーティングのためにブリッジへと移動するクリムとアイーダに、ちゃっかり同行するベルリ以下3名。ブリッジでクリムのおさげにひっついて「やめんか!」と怒られるラライヤが大変可愛い。着々とラライヤに懐かれているクリム君だが、画面の見えない所で意外にラライヤの世話を焼いていたりするのだろうかと考えるとなかなか萌える。こうした話と話の間でサラリとキャラ同士の関係性を進展させているのも痺れる。

 ラライヤにじゃれつかれた直後にベルリにアッサリ間接極められるクリム君。ネタキャラ化が一向に止まる気配が無くて素敵。で、一方ベルリ君の方はと言うと、クリムの間接を極めつつ

アイーダ「君はいちいちカーヒル大尉の作戦をめちゃめちゃにする!」
ベルリ「それについては謝りきれないでしょうけど謝ります」
アイーダ「謝って済むことではありません」
ベルリ「代わりにはなりませんがこの艦は守ってみせます」

と、前話と同様の意思表示を改めて発言。ベルリの言葉を丸々信じた訳ではあるまいが、クリムや艦長はベルリの力を借りる事を決める。それに対して不満気なのがアイーダなのだが、このシーンに限らず、アイーダに比べて他のメガファウナクルーが「カーヒル殺し」のベルリに対して余り悪感情をぶつけて来ないというのが少し興味深い。それだけ周りが大人と言うべきか、それともアイーダの目に映る程には人望の無い男だったととるべきか。こうした点も人間関係の立体感が見えて高度な作劇だなと思わせられる。

 とりあえずの戦力要員として認められ、パイロットスーツに着替えるベルリ。ここでノレドはブリッジにおけるベルリの言葉を聞いていたにも関わらず

「あの女に惚れっぱなしなんだ」

と、ベルリの行動原理の根底にアイーダ恋しさがある事を指摘してみせる。ベルリはその言葉を無視してラライヤの出自に話題を逸らす。
 「カーヒル殺しの負い目」
 「アイーダが気になる」
 「Gセルフやラライヤの謎が知りたい」
 「アーミィへの不信感」
 ベルリが海賊に協力する理由は、本人の口からも周囲の口からも、描写からも様々だ。どれが正解と言う訳でなく、おそらくいずれも真の理由の1つではあるのだろう。人間そう簡単に行動の理由なんてのは分かるものではないのだ。自分自身にすら。

 戦闘シーンで大活躍するのは当然今回の(ある意味)主役のマスク。凄まじいテンションの高さで台詞をまくしたてる彼の姿は視聴者の笑いを誘う。のだが、普段のルイン・リーの性格からはかけ離れた言動に、ちょっと嫌な予感もまたさせられる。富野アニメファン、ガンダムファンなら当然「強化人間」の一言を思い出す所だが…。
 一方MSのエルフ・ブルックも負けてはいない。「可変式大型MS」「全身ビーム兵器」とMSの個性を強く印象づけてくれるカットが目白押しだ。

特に両手を合わせてのビーム発射ポーズは、これだけで「エルフ・ブルックと言えばこのポーズ!」と言えるくらいに強い個性を放っている。2話の感想でも「グリモア百烈拳」の際に述べたが、Gレコではその回の主役MSに「スパロボに出たらこの動き絶対戦闘アニメーションで使用される」という動きを毎回毎回ちゃんと与えている訳だ。
 そしてさらに注目すべきは、そんな毎回毎回現れる「今週のビックリドッキリメカ」演出に対抗する形で、我らが主役機のGセルフもまたほぼ毎回何らかの見所を与えられている点だ。今回もコアファイターからの「水の玉」攻撃に戦闘中のコアファイタードッキング、そして最後の富野ガンダムお馴染みのビームサーベル回転バリア。

 「45秒間だけなら飛べる!」という設定部分も、古典的ながら時間的制約が盛り上がりを見事に演出している。何と言うか「ロボットアニメの描き方を教えてやる!」というお爺ちゃんの声が聞こえてきそうだ。

 戦闘が終わりメガファウナに帰投するベルリら。ここでアイーダにとって非常に残酷なシーンが描かれるのだが、このシーンについては後述。
 アイーダとベルリとの間に割って入り

「よう少年。少尉でならアメリア軍に推薦してやるぞ」

とベルリに声をかけるクリム・ニック。そしてそれに

ベルリ「中尉でなけりゃダメですよ」
クリム「なら私が大尉になってからだな」

と会話が続く。これは勿論今話前半部の

クリム「なあ、貴様アメリア軍に入隊しないか?」
ベルリ「中尉の位をくれるのなら入隊します」

という会話を受けてのシーンだ。前半のシーンでは険悪なムードが流れていたにも関わらず、ここのシーンでは非常に和やかな空気が流れている。自分の折角の誘いを軽口で茶化されながら断られた事で不機嫌になったクリムも、ここでは笑顔でジョークを返す。どこか共闘を通じてお互い認め合い、「男の友情」を交わした感がある。当初はライバルキャラになるかと思われたクリムだが、どうやら良き友人ポジションに収まるようだ。

 メガファウナが陽動作戦の為に弾道飛行へと移った所で今話は終了。という訳で来週は1話以来の宇宙戦闘。どうなる事やら。

という訳で、例によって例の如くその2に続く