ガンダム Gのレコンギスタ 第七話感想その1

第7話「マスク部隊の強襲」

 前々回で脈絡無く登場してGセルフに敗北したマスクが再登場。ラライヤがGセルフを操縦して何やかんやありつつも、いつも通り襲撃を退けるというお話。また並行してベルリの母ウィルミットのキャピタル脱走劇が描かれる。最近のアニメのスピーディな展開を考えるとそろそろワンパターンと言われかねない状況だが、個人的にはここ10年くらいのサンライズが得意としてる、とにかく事態を転がして視聴者を引っぱる手法が苦手なので、むしろこういったワンパターン感には安心感があるのだ。


 前話ラストでは己のデレンセン殺しという現実から目を背けようとしていたふうなベルリだが、アバンタイトルのナレーションでベルリがともかく事実は事実として受け入れた事が伝えられる。前話のおさらいのように見えて、話と話の間の情報をねじ込んでいるという訳だ。

 「マスク部隊の強襲」のタイトルコール後に、当の「マスク部隊」がいきなり登場。そしてマスクの

「私の真実を伝えよう。私は、実はクンタラ出身だ」

という(視聴者のツッコミ待ち)台詞。知ってた。が、その直後、マスク部隊が全てクンタラ出身者で構成されているという新情報が明かされる。そして

クンタラとは何だ?」
「今世紀以前、人に食われるような劣った人々、という意味だったと聞きます」

の台詞だ。

 クンタラ宇宙世紀時代の被食人種であるという裏設定は、当然ある程度のGレコファンであれば皆知っているが、それと同時に「劇中では明示しない」という監督発言も知られている。この台詞はその宣言に反しているようにも見えるが、先入観無しに聞くと「食われる」という言葉の意味は、あくまで慣用句としての「食い物にされる」程度と受け止める方が自然だろう。ひょっとしたら、共食いの歴史は黒歴史化し、劇中の人物らも「食われる」はあくまで慣用表現でとしか思っていないのかも知れない。
 とにもかくにも、マスク部隊は被差別階級民の集まりであり、その劣等意識をバネに士気を上げようとしているようだ。

 視点はメガファウナの主人公らにサラッと触れた後、即座にキャピタル側のアンダーナットへと移る。ここでの(というより今話での)主要人物は主人公ベルリの母ウィルミット・ゼナム女史。印象的な彼女の「1人笑い」シーンについては別エントリーで後述。

 場面はマスク部隊らが所属する戦艦ガランデンへと戻る。そして登場するエルフ・ブルックの編隊。前話前々話とで強敵として描写されていたエルフ・ブルックエルフ・ブル)が今話では複数機でベルリらに襲いかかる訳だ。一話ごと一話ごとの丁寧な敵側のパワーエスカレートが今話でもなされている。

 対して海賊(アメリア)側からは新MSジャハナムがお目見え。ただしこちらは新MSと言ってもあくまで画面に始めて出て来ただけであって、特に新開発MSという訳ではなさげ。

顔面全体の十字アイに「まばたき」と、コイツも個性の強い頭部をしている。

 メガファウナの整備士やブリッジクルーらによる「愚痴」での状況説明を挟み、次が問題のクリムによるラライヤちゃん催眠(?)シーン。何をしてるんだかよくは分からないが、とにかくクリムの台詞回しがキモい。大変キモい。毎話毎話相変わらずキャラ立てに余念の無い天才クリムである。

シーンの時系列は前後するが、このクリムの気持ち悪さにちゃんとSFSのパイロットが言及していたのは妙な安心感があった。また、そうした台詞を言うのが完全なモブキャラというのも面白い。
 とにもかくにも予告にあったようにクリムはラライヤをそそのかしてGセルフを操縦させた訳だ。

 今回のある種のハイライトになるのが、その直後のウィルミットの脱走劇。彼女は下手な一芝居を打ってスペースグライダーを使い無理矢理地球に降りようとする。ベルリに会う為だけに。

 その姿は、前述の「1人笑い」のシーンと併せて考えると、どこか若干の狂気を孕んでいるようにも見えるが、言動や描写がコミカルなせいでどこか緊張感が無い。画面に緊張感が無いままに「侵入角度を間違えたら燃え尽きて死ぬ」という極限状況の説明がアッサリと流される。この辺のバランス感覚もまた意図的なものなのだろう。
 細かい話だが、ここでのウィルミットの「落ちているの? 飛んでいるの?」というパニック混じりの台詞は、宇宙空間に投げ出された恐ろしさを端的に表現していて実に良い。
 ところで、このウィルミットの大胆な行動はクリムのラライヤそそのかし以上に大事件に思えるのだが、しかし前回の予告では特に触れられてはいない。それが何故かと言えば、ウィルミットの行動をベルリは知る事が無いからだ。次回予告であってもあくまで劇中でのベルリの視点は保持しているという訳だ。

 そして毎度おなじみBパートからの戦闘シーン。毎度のことながら「戦闘が始まる」という描写が多視点で描かれるのが見ていて楽しい。緊急体勢における慌ただしさが画面から空気感として伝わってくる。
 ここでベルリはGセルフの代わりにアメリア軍の量産機ジャハナムで出撃するが、その際の描写から彼がもう随分と海賊らに仲間として受け入れられているとこが確認できる。特にアイーダのベルリに対する態度が前回までと比べてかなり軟化しているのは、前回の件があったからだろうか。いつの間にやら愛称で呼ぶようになっている。

 ベルリの方も「船を守ってくれ!」というハッパの頼みに対し

「任せて下さい!」

と応える。直後コクピットハッチを閉めてからの

「って言えるようになるまでには2、3年かかりますよ」

というボヤき台詞から「任せて下さい!」の台詞が本音で無い事が示されるが、それが逆に仲間同士の気づかいめいたものを感じさせる。そう考えるとハッパの「船を守ってくれ!」という台詞の方も、ベルリが本来は敵の組織の一員である事を踏まえた上での「敢えて」の台詞のようにも聞こえてくる。この辺も人間関係の妙が見えて面白い。

 マスク部隊との戦闘に巻き込まれた形になるクリムとラライヤ。ビームの光に誘われたように飛び出すラライヤのGセルフだが、当然まともな戦力にならず海に落ちる。そんなラライヤのピンチに名前を叫ぶクリム。「判断力のつかない少女を丸め込んでMSに乗せる」という、ちょっと外道な真似をしたクリムだが、本気でラライヤを心配する素振りに少し安心。ピンチな状況に陥ったラライヤの「奇麗な瞳さーん!」という呼び声も、緊迫した戦闘状況の中で少しほっこりする。

 微妙にフラグ立ってそうなクリムとラライヤだが、溺れるラライヤを助けたのは主人公のベルリ君。それに伴い、Gセルフパイロットもラライヤからベルリへとバトンタッチしたのだが、このシーンでラライヤが「飛行中の鳥の目の色を視認」「Gセルフからジャハナムコクピットへとジャンプ」という高い身体能力を地味に披露。伏線のようにも見えるが、はてさて。

 戦闘ではモンテーロのクリムがマスク相手にピンチ気味。クリムは名無し量産機には無双するが名前有りキャラには苦戦するという辺りの序列がそろそろ確定的になってきた感。一方で姫さまの方はと言うと、見事に役立たずキャラを着々と構築中。Gアルケインに見せ場はいつ来るというのだろうか。
 そしてそこに颯爽と現れるベルリのGセルフ。交戦中の

「貴様達はGセルフが空から降って来た理由が分からない! のかー!」

という台詞が、独特の2段階イントネーションもあって印象的だ。「お前には分かっているのか?」という視聴者のツッコミも入りそうな所だが、要するにベルリには「Gセルフの出所」や「宇宙からの脅威」という謎が行動原理として大きいという事なのだろう。

 マスク部隊に対して劣勢のため、撤退しようとするベルリらだが、ここでアメリア軍の大型MAアーマーザガンが加勢に現れ、逆にマスク部隊が撤退を余儀なくされる。

 ベルリが海賊側に転がり込んだ4話からこっち、基本的にはキャピタル・アーミィに襲撃されては撃退するというパターンを繰り返しているが、
 4話:デレンセン撤退。クリムの台詞により
   「実戦で撤退の判断が出来る指揮官(=デレンセン)は優れた軍人」とフォロー
 5話:マスク撤退。「戦いのデータはとれた」と本人の口から負け惜しみ台詞
 6話:デレンセン戦死
そして今話と、毎回微妙にパターンを変えている事が分かる。この辺は1話完結4クールのロボットアニメを延々やってきた富野監督流の妙技ではある。

 ウィルミットママも無事大気圏突入に成功した事が描かれた辺りで次回に続く。

という訳で突っ込んだ話はその2に続く。