ロボットアニメタイトル論………という程のものではない雑文

えー、過日「はじめの一歩」でおなじみの森川ジョージ先生がなんかGガンダム見始めたらしいじゃないですか。


個人的には「森川先生にゴングが鳴る前にアッパー決める反則行為に苦言を呈されるドモン・カッシュ」というシチュエーション自体がひたすら面白すぎてそれどころでは無かったりするんですが、個人的に注目したいのはコチラのツイート。


そもそもロボットアニメにおける「番組タイトル=主役ロボット名」っていう図式ってもうゲンダイでは随分揺らいでると言うか、時代の変遷と共に結構いろんな経緯を辿ってた所があって、その辺って意外とロボットアニメにおける歴史を語る上で重要なポイントだったりするような気がするんですよね。

という訳で今日はその辺についてちょっと話してみようと思います。

 

そもそもロボットアニメって最初は主役ロボットの高額玩具ってのがジャンルとしての柱だった訳ですよね。マジンガーZ(1972)で確立したそのマーチャンダイジングの大成功が、一大ロボットアニメブームを巻き起こしたのが70年代だった訳よ。
で、その時代は主役ロボット自体が大正義超主力商品だったので、それがそのままタイトルになってるのには必然性と合理性とがあった訳。まあ勿論そうでなくても、特撮にしろアニメにしろヒーロー物はジャンルとしてそりゃヒーローの名前が番組タイトルでしょって当たり前の話はあるけど。

 

で、そこに大きな変化を与えるきっかけになったのが皆さんご存知の機動戦士ガンダム(1979)。まあガンダムもクローバーの合体玩具がまずあって、それも意外と結構売れてたよって話もあるんですが、それはそれとして何が起こったかって言ったら「ガンプラ」の大ヒットですよ。
ガンプラの場合、主役ロボットのガンダムだけでなく、仲間メカのガンキャノンガンタンクはおろか、ザクだグフだドムだジムだの、敵メカやられメカまで含めて無茶苦茶のハチャメチャに売れたんですよね。
この「主役ロボ以外もむっちゃ売れた」ってのが何に起因してるかって言ったらガンダムの世界観設定と作風が根幹にあるのは明白で、ロボットをあくまで「戦闘兵器」としてミリタリー的に描く作中描写が「プラモデル」という商品形態に極めて合致して、その結果として「毎回のように出てきてはガンダムに撃墜される」というやられメカのザクが「量産機」という強力な個性で商品にバリューを持たせる事にもなってたという話が、まあ細かい正確性はともかくとしてザックリ説明できる訳です。

 

という訳でこのガンダムガンプラの一大ムーブメントが80年代のいわゆる「リアルロボット」ブームを巻き起こす事になった訳なんだけど、ガンダムの成功を踏襲した以降のリアルロボットアニメってのは、ガンダムの作風自体を踏襲する訳なので、それ以前の作品に比べて作中での主役ロボットの重要性をかなり引き下げるようになったんですよね。
エポックメイキングのガンダム自体は、今ではよく言われるように「冷静に見ると結構マジンガーZ的なスーパーロボット要素を残していた」ってとこがあって、なんだかんだでストーリーも基本的に「ガンダム」を中心に回ってた所がある。なんだけど、それを踏襲した後発のリアルロボットアニメはガンダムでウケたミリタリー要素を重視した結果として、主人公ロボットがどんどんと「特別なオンリーワンな一体」的な描かれ方をしなくなってった。
もちろん商品展開の方も安価なプラモで色んなメカをドンドン出してくって方向で進めてるので、現実世界のマーケティングの方でも主役ロボットの占める割合が相対的に低下気味だったとこがある。

 

で、なので実はこの時点で結構な数のロボットアニメが「番組タイトル=主役ロボット名」になってる事に微妙な齟齬が発生してたんですよね。ミドルティーン以上向けのプラモの商品展開があったにせよ、それと同時に従来のロボットアニメを踏襲した低年齢子供向けの合体変形玩具も出して両面作戦を敷いてたのが当時のロボットアニメだったので、そういう意味でもマーケティング的に主役ロボットが番組タイトルになってるのは当然と言えば当然だったんだけど、一方で実際の作品内容からは大なり小なり乖離が発生してたって話がある。

 

バイファム(1983)にしろレイズナー(1985)にしろ、もし現代で同じストーリーのロボットアニメが深夜帯放送されてたら、タイトルは主役機になってはいなかったんじゃなかろーかと思うんすよ。
それこそ富野監督の異世界3部作、ザブングル(82)、ダンバイン(83)、エルガイム(84)とかも、マーケティングの都合一切考えなければ「惑星ゾラ放浪記」「オーラバトラー戦記」「ペンタゴナ・ストーリーズ」とか、そういう感じのタイトルの方が作品内容自体には合致してたのでは?と思う。
特にこの3作に関しては「作中後半で主役ロボットが交代する」という展開を繰り出して定番として定着させたことによって、「番組タイトル=主役ロボット名」の図式の齟齬をさらに大きく広げた感がある。その流れでZガンダム(85)ではとうとう事前に決まっている主役機の交代劇に合わせて、交代後のロボット名を最初から作品タイトルにする、という反転現象が起こるに至っている。これが話題の大本になったGガンダム(94)のパターンな訳ですよね。
(ただ実際にはこのZガンダム方式のタイトルは結構少なくて、ロボットアニメ全体を見渡しても、Z、ZZ、Gガン、OOくらいか? あれ、ガンダムだけ?)

 

ただし一方で80年代ロボットアニメでも、例えば実際に主役ロボットが作中での最重要マクガフィン的に扱われているイデオン(81)やゴーグ(84)なんかはそのまま作品タイトルで全く違和感無いし、逆にマクロス(82)やボトムズ(83)みたいにそもそも主人公の乗るロボット自体が初めから量産機な作品は、作品タイトルが主役ロボット名ではなくなってたりもする(マクロスマクロスが主役ロボットだろとか、ボトムズも最初はATの俗称がボトムズだったろとかいう話は置いといて)。
まあそもそも論としてこの辺は個人の感覚も大きいので、一概に「当時のロボットアニメのタイトルは内容と合ってなかった」と言ってしまうのも微妙に雑語りな所がある訳なんですが、その辺の個人差はある程度許容してもらうとして、「番組タイトル=主役ロボット名」という構図にこの時代一定の違和感が大なり小なり存在していたという事実自体は否めない所がある。

 

で、そこから時は流れ90年代末頃からゼロ年代にかけて、アニメ界全体でエヴァンゲリオン(95)のヒットを契機(として良いかはこれまた諸説あるが)として深夜アニメのブームに円盤商法の確立など、ビジネスモデルの大きな変化が起きる。
それによってロボットアニメに関しても完全に低年齢の子供をマーケティング対象から除外し、主役ロボットが主力商品でもなんでもなくなった作品が多数現れ始めた(まあOVAの話もすると80年代からの流れはあるのだが)。当然そうなるとそれらの作品は主役ロボット名を番組タイトルにするメーケティング上での必然性がほとんど無くなるので、ロボット名がタイトルに一切現れないロボットアニメがこの頃から急速に増え始めることとなる。

 

ただ、より正確な話をすると、エヴァの影響を強く受けた作品群の場合、エヴァ自体がそうであるようにイデオンの系譜として主役ロボットを作中の重要マクガフィンに据える場合が多いので、結果的にマーケティングの都合でなく、作品内容からの必然として番組タイトルをそのままロボット名にするパターンも普通に結構多い。
さらに言えば、過去作のリメイクや「古き良きスーパーロボットのパロディ」気味な作品も多かったので、この頃のロボットアニメの一覧表を見てみると意外と思ってたより「番組タイトル=主役ロボット名」の作品がそこまで減ってなかったりする。

 

閑話休題

 

で、当の話題の発端となったガンダムシリーズに関しては、その折衷という感じになってる訳ですよね。
シリーズタイトルとして「ガンダム」という名前は当然入れない訳にはいかないので、そういう意味で言えば今でも「番組タイトル=主役ロボット名」を堅持していると言えるが、一方で作品タイトルはそうでなくなってる場合が特に近年多くなってる。
元々OVAや劇場版では、主役機名ではないタイトルが付けられてた訳なんですけど、大きな契機を見るとすればガンダムSEED(02)がターニングポイントになるのかな、と。
SEEDの放送当時だと「SEEDガンダム」みたいな名前の機体が後半登場すると思っていた視聴者はかなり多かったと思うんですよね。でまあ、ご存知の通り結局最後までそんな名前のガンダムは登場しなかった訳なんですけど。
「SEED=種」という単語の意味する所についてはあくまでスタッフインタビューなどで語られるだけで、劇中で何かが明言された訳ではないんだけど、ともかくとして機体名ではなく作品コンセプト自体がタイトルとなった初のTVシリーズガンダムがSEEDだった訳です。
その後もいくつかの作品を挟みつつも、直近の3つのTVシリーズが「Gのレコンギスタ」(2014)、「鉄血のオルフェンズ」(2015)、「水星の魔女」(2022)と、もはや完全に主役MS名とは無縁のタイトルが付くようになったのはご存知の通り(ビルドシリーズは置いといて)。

 

まあという訳なので、要はGガンってそういう歴史の流れのちょうど狭間の時期ではあるんだよね。
シャイニングガンダムゴッドガンダムも、言うてそんなに作中で他の要素と比べて突出した存在だったかって言ったら現代の感覚からするとそうでもないので、多分現代で放送されてたらコレも何か別のタイトルついてたろって思うんすよ。
というかそれ抜きにしても、「Gガンダム」の「G」が何かって実は今でも結論出てなくないすか?って話もあったりする。確かに劇中でも1度か2度、ゴッドを指して「Gガンダム」って呼ばれてたシーンあったと思うけど、最初はそもそも「ガンダム・ザ・ガンダム」の意味だって公式から言われてたはずってのもあったりで、地味に確定してない気がする。
まあそれはそれとしても、ガンダムシリーズでタイトルが主役機名で違和感ほとんど無いの、「ガンダム」と「ターンエー」と「ユニコーン」くらいかなあ、というのが個人的感覚。AGEは見てないのでスマン。後VガンはVガンであの作風に「ビクトリー」という冠が載ってるというの自体が皮肉的で結構嫌いじゃなかったりするが。

 

という訳で、余分な話もちょこちょこした気がするけど、ロボットアニメのタイトル傾向の変遷ってロボットアニメ史そのものと連動してる所があって、結構面白い話題だと思うんすよね。なので何か森川先生のツイートがバズってたので、それに乗せてちょろっと語らせて頂いた次第。

 

最後にもう一個だけさらに余分な話を付け加えておくんだけど、こういう流れでガンダムシリーズについても主役機名がタイトルでなくなってったよって話したんだけど、最初にも言った通り「ガンダム」って名前だけはシリーズタイトルとして存続してる訳じゃん。
ただ「ガンダム」というカタカナ4文字については概念的に使用されてる節があるので別にもう良いんだけど、そういう意味で言うと一緒についてる「機動戦士」の4文字、ここだけ何か浮いてねえ?って気持ちがあったりする
「長期シリーズのシリーズタイトル」って先入観を一切取っ払って純真無垢にタイトル見た時、鉄血にしろ水星にしろ、「機動戦士」の部分だけ70年代ロボットアニメの雰囲気をそのまんま引きずってて超浮いてる気がするんすよね。これ俺だけか?
まあぶっちゃけもう「ブランド」が存在してるし、ここ変えちゃうと50音順索引で面倒くさいことになるので、もう変えるに変えられんくなってるとは思う。実際バンダイチャンネルで一覧見るとGレコとビルドシリーズだけ別区画な上に、ターンエーが完全に孤立してるので、そりゃ変えられんよなあと思ったり思わなかったりラジバンダリ。

 

まあ割と話題がとっちらかった感もあるんだけど、そういう訳でロボットアニメタイトル論でした。まったねー。