オジュウチョウサン物語 第1章1「父ステイゴールド」

 

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 オジュウチョウサン。父ステイゴールド、母シャドウシルエット、母父シンボリクリスエス。2011年4月、北海道は日高町、坂東牧場にて生を受けたサラブレッドである。
 競馬は血統の物語であり、サラブレッドはその物語の結晶である。1791年にイギリスにて当時の競走馬の血統を網羅的にまとめたジェネラルスタッドブックが刊行されて以来、現在に至るまで全サラブレッドはその血統が記録され続けている。速い馬をより速く、強い馬をより強く。それだけを目的に200年以上血と血を掛け合わせ続けた営みが現代のサラブレッドを形作っている。1頭のサラブレッドについて語ることはその馬が背負った血の物語について語るに等しい。
 そこでまずは本書の主役であるオジュウチョウサン自身について語る前に、その父であるステイゴールドについて紹介したい。
 
 ステイゴールドは日本競馬史上空前絶後の大種牡馬サンデーサイレンスの代表産駒の1頭である。
 彼が現役生活を過ごしたのは1996年の暮れから2001年いっぱいまで。同世代にはマイル最強馬タイキシャトルや悲劇の逃げ馬サイレンススズカをはじめとした個性豊かな名馬たちが揃い、一つ下の世代はスペシャルウィークエルコンドルパサーグラスワンダーを擁し今なお「史上最強」と呼ぶ者も多い黄金世代。さらにもう一世代下には日本競馬史上ただ1頭、古馬王道GI全5レースを年間全勝し世紀末覇王と呼ばれたテイエムオペラオーが活躍している。逆に一つ上の世代には26年ぶりに牝馬として年度代表馬の座に輝いた女帝エアグルーヴがいる。
 ステイゴールドが現役生活を送った2000年前後は、日本競馬におけるいくつかの黄金期の内の1つだったと言える。
 
 そんな多士済々な名馬たちに囲まれながらステイゴールドが残した競走成績は50戦7勝。数字で言えばお世辞にも一流馬の成績とは言い難い。そんな彼が何故、42頭ものGI馬を輩出し71ものGI勝利数を上げた大種牡馬サンデーサイレンスの代表産駒の一頭に数えられるのか。
 そこには彼が送った数奇でドラマチックな競走馬生と、そして引退後の奇跡的な種牡馬としての活躍が理由にある。

 

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