ステイゴールドが逝ったそうだ。
人気種牡馬ステイゴールドが急死…オルフェやゴールドシップ輩出(サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース
去年の3月くらいから競馬ファンの仲間入りをした私は、レースを見るようになってしばらくして、さてどういう馬を応援するようにしようか、という事を考えるようになった。どんなスポーツでも、特に初心者は分かりやすい応援対象がある方が楽しいものである。
そんな訳で「以前から知っていた馬」というだけでステイゴールドの産駒達を応援する事にした。知っていた理由は、以前に(よろしくない方法でとあるサイトにアップされていた)この記録映像を見た事があったからだ。
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ステイゴールドの現役時代を綴った文章の中でも、特に面白かったのがこの本だ。
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その中でも競馬評論家、山野浩一氏の寄稿が特に面白い。現役時代のステイゴールドファンには、ステイゴールドを「いつも頑張っているのに毎度報われない馬」と認識して応援していた人達も多かったそうだが、山野氏はそれを「誤解」だと断言する。
ステイゴールドを善戦マンと呼び、名バイプレイヤーと呼び、努力しても報われない馬というような誤解をしていた人も多く、そのような誤解を含めてステイゴールドの人気が盛り上がったのだろうと思う。馬に限らず、ほとんどの人気スターへの思い入れの多くは誤解に基づくものだろう。
ステイゴールドの共同馬主の1人であった山野氏は、初重賞制覇の目黒記念の際にはレース終了後検量室へと喜び勇んで駆けつけたそうだが、そこで氏は「その時に見たステイゴールドの恐ろしい顔は忘れる事が出来ない」と述べている。曰く、
激しいレースをしての興奮もあるのだろうが、なにか自分の大切なものを壊されて腹を立てているかのように思えた。確かに勝てば厩舎の人々は褒めてくれるけど、ステイゴールド自身にはさほど良いことがあるというわけでもない。ステイゴールドは走るのが好きで、それを自分自身の楽しみとしているが、人のために走る気は毛頭ないということではないだろうか。そう結論づけたとき、私はそれで良いと思ったし、その後のステイゴールドには、さほど勝つことを求めなくなった。
ここ半年程、2chのステイゴールド産駒応援スレに常駐している私の感覚としては、山野氏が言う「誤解」は今のステゴファンからはほぼ一掃されたように思う。今も産駒を追いかけているようなファン達の間では「結局現役時代はほとんどのレースに本気じゃなかった。真面目に走っちゃいなかった」という認識はかなり共有されている。
時代を経た上でのファンの成熟、という面もあるのだろうが、おそらく、この誤解の解消に一役買ったのはオルフェーブルやゴールドシップを始めとする、彼の子供達の活躍(?)にあるのだろうと思う。先日もゴールドシップが完全なる格下相手のAJCCで見事にやらかしてくれたのが記憶に新しい。
そんなふうに考えると、こんな所にもささやかながらに「血のロマン」という競馬の魅力があるのだなあ、と後追いファンからすると微笑ましい気分にもなる訳である。
とにもかくにも、私みたいな競馬ファンとしてペーペーの人間がファンの多いステイゴールドについて偉そうに語るなど、おこがましいにも程がある。だけどそれでも、この一年彼の産駒を追いかけさせてもらったのは本当に楽しかった。その思い出だけは本物であると思いたい。
彼の最後の一年が、私の競馬ファン最初の一年で本当に良かったと思う。短い間だったけど、本当にありがとう。
オリエンタルアートの15が、今月末に出産予定とのことだ。今年種付けしたわずかな数頭を含めて残り4世代、子供達の活躍を空の向こうから見守っていて欲しい。冥福を祈る。