ガンダム Gのレコンギスタ 第八話感想その1

第8話「父と母とマスクと」

 前回の終わりから引き続きマスク部隊との交戦途中から今話。戦闘の最中にアイーダ父とご対面しつつ、マスクらを一通り撃退したと思ったら、今度はベルリが母と再会。アメリア軍総監とキャピタル・タワーの運行長官が会して、海賊船メガファウナの今後について話し合う、というのが今話のあらすじ。今回、このアニメでは実は初めて「Aパートで人間ドラマ、BパートでMS戦。敵を撃退して終了」のパターンが崩れる。物語が大きく動き出しそうな気配、か?


 今話は珍しく(2→3話以来)前話ラストからの直接的な続きからスタート。それが理由かは知らないが、今話は冒頭のベルリによるモノローグは無し。前話の段階では私はてっきりアーマーザガン登場でマスク部隊は退却していたのかと思っていたが、戦闘そのものは続いていた模様。

 アーマーザガンと共に補給物資を積んでやってきたSFSに乗っていたのが、アイーダの父親にしてアメリア軍総監でもあるグシオン・スルガン。ここで父と娘の再会が描かれるのだが、アーマーザガンのミックジャックが必死にマスク部隊相手に頑張っている真っ只中で、一時休憩モードに突入するベルリとアイーダの姿はなかなか衝撃的。あまつさえ砂浜に座り込んでティータイムだ。

 このシーンでは流れるBGMすらノンビリした曲が選ばれており、とても真横でMS戦が行われている状況とは思えない。
 このシーンを見て少し思い出したのが、2年前に聞いた富野監督の講演会の1コマ。当時の私のツイートを1つ引用しとく。(全体はこちらhttp://togetter.com/li/409622

 Gレコの戦闘は基本的に敵味方共に極力コクピットは狙っていないようだが、それと似たような話として「影に隠れて休憩中の敵までは積極的には狙わない」みたいな認識があるのかも知れない。明確にルールがあるというより、何となくの暗黙の了解として。

 そしてここで今週のビックリドッキリメカ、トリッキーパック登場。もちろんGセルフに装着される。しかし装着させると言っても、別にGセルフ専用に作られたパーツでも無い。加えて、ただの島影にまともな整備機器がある訳でも無いので、「多分装着できると思うけどやってみよう」といった場当たり的な印象がある。それが「リアルな現場」感を生んでいて面白い。

「コネクタは合うよな?」「そう見えますけど!」のやり取りが実にそれっぽい。

 バックパックを装着完了して戦闘に参加するGセルフ。一緒に飛び立つ姫さまのGアルケインだが、姿勢を崩してGセルフにぶつかり、ベルリ君からは「邪魔をして!」と文句を言われる。ネットではポンコツ姫の2つ名が本格的に定着してきたアイーダ嬢だが、キャラ立ては順調と言えよう。


 戦闘描写ではイチイチ高度をとる事に拘るマスクの台詞が印象的だ。こうした「上下」の強調は4話の戦闘でも丁寧に描写されていたのを思い出す。Gレコ世界のMSはSFSによる補助こそあれど、基本的に短時間であれば空中飛行は自由自在と見て良さそうだが、そうした設定で空中戦をやると、下手をしたら宇宙戦と大して変わらない戦等描写になりかねない。ところがGレコでは「上下」をしっかりと強調するので、画面の中が明確に「重力下」である事が感覚的に伝わってくる。「上下」の概念は重力下の空中戦における最大の特徴と言えるのだ。
(ちなみに、こうした「高さ」の拘りについてグダちんさんがこれまた良い記事を書いてるので参照すると良いっすよ。http://d.hatena.ne.jp/nuryouguda/20141115/1415992843

 一方メガファウナ陣営側は引き続き現場の急ごしらえ感が戦闘中にも表れており、ベルリはビームライフルを取り回すのにバックパックが邪魔をして、ミック・ジャックのアーマーザガンも、どうやらビームの収束が上手くいっていないらしい。
 で、割と万全なはずのアイーダのアルケインは、キャピタルタワーから近づく未確認飛行物体の知らせを受けて、慌てて迎撃しに離脱する。が、直後に未確認機が戦闘能力を持たないグライダー機だという事が分かるが、飛び出していったアルケインは無線が使えないのでもう呼び戻せない。それに対し、SFSパイロットのモブキャラが「突貫娘ですからねえ」と辛辣なコメント。その後の総監とのやり取りも含めて、相変わらず名無しのモブキャラにもキャラ性をふんだんに与えるアニメだ。

 さてそんな中でようやく真価を発揮したGセルフのトリッキーパック。何だかよく分からないが、相手の電子管制を一時的にシステムダウンさせるらしい。それによりスキが出来たマスクのエルフ・ブルックが、Gセルフの振りかぶりパンチを正面から喰らう。
 


 制御系統をやられた上に物理攻撃を受けて吹っ飛ぶエルフ・ブルックだが、パイロットのマスクはパニックになったのか、空を飛ぼうとして島にぶつかりかける。「高さ」の制圧に拘って戦闘をしていたマスクが、最後に上下感覚を喪失して負ける、というのも結構奇麗なオチだ。
 最後のマスク機が撤退した事で、これで今話の戦闘は終了。と思いきや、意外にもここからさらにもう一騒動が始まる。
 どこかに飛んでいったアイーダ機を追いかけて自身も空へと飛び上がるベルリ。望遠モニタでアイーダを探していると、そこにはバックパックオーバーロードして姿勢制御もままならないGアルケインの姿が映る。

 自身もパニック気味なアイーダがとてもヒロインとは思えない絵面を晒している一方、ミノフスキー粒子散布下から抜け出したベルリは、こちらへと近づくグライダーに乗っているのが自分の母親であるウィルミット・ゼナムである事を知る。母の乗るグライダーを撃ち落とそうと銃を構えるアルケインに慌てつつも、何とかかんとかグライダーを無事受け止める事に成功し、ここで今話冒頭のアイーダ同様、ベルリも自身の母親と再会する事となる。





(このシーン、大気圏グライダーが逆噴射でブレーキをかけていたが、トリッキーパックの能力によってGセルフ側からコントロールしたようにも見える。エルフ・ブルック相手には撹乱だけだったが、上手くやれば敵機の乗っ取りもやれるのかも知れない)

 この一連のシーンは絵面にせよ台詞にせよ妙にコミカルかつ非常にスピーディに描かれており、ドタバタとした印象を受けつつもBGM演出と相まって今話でも随一の盛り上がりを見せる。戦闘の途中から始まった今話だが、クライマックスが戦闘でも何でも無いこんなシーンだというのが何ともGレコらしい。
 しかしその中でもヒッソリと「ウッカリで人殺しをする所だったアイーダ」という、なかなか恐ろしいシーンも内包されており、単純なコミカルさだけで終わってくれないのがまたGレコだ。「嘘をついちゃった」とテヘペロするアイーダの可愛らしさにウッカリ騙されて本当に良いのか。相変わらず一筋縄ではいかないアニメである。


 そうこうして一同はメガファウナに帰還し、おなじみ海賊の面々に加えてアメリア軍総監のグシオンとキャピタル・タワー運行長官のウィルミットとでご会談。これまでポソポソと台詞の断片から仄めかされる程度だった「宇宙からの脅威」について、ここで一歩踏み込んだ情報開示がなされる。

 とは言え、ここで分かる情報はと言えば、要するに「月面付近に人工物が増えている」という程度。視聴者からすると何が脅威なのかはイマイチ分かりづらいが、どうもその内の1つはGレコ世界での重要なエネルギー源であるフォトンバッテリーの生産地にして、スコード教においては聖地的な扱いがなされているらしい。そうした宗教上の「聖地」に何らかの異変が起こっているらしい、というのは、それだけで信徒としては動揺せざるを得ない状況という事なのだろうか。
 もう一点この写真の画像で気になるのは、月の表面に帯状に抉れたような均したような、ともかく人工的な「痕」のようなものが見える所。キャラクターからのリアクションが無いと言う事は、これ自体はこの世界では常識的な知識なのかも知れないが、どうやら月全体をどうにかしてしまう程の何かを人類は過去にしているらしい。
 とにもかくにも、「宇宙からの脅威」に関してこれまでよりかは話は進んだものの、まだまだ分からない事だらけ、というのが現状だ。

という訳で突っ込んだ話はその2に続く。