ガンダム Gのレコンギスタ 第三話感想その1

Gのレコンギスタ第三話「モンテーロの圧力」

 今話では前回同様にアイーダを取り戻しに海賊のMSが攻めに来て、クンパ大佐の思惑もありGセルフアイーダは無事脱出する事に成功したが、ベルリ、ノレド、ラライヤも一緒に海賊の母艦へと同行する事になりました、というお話。

 1話と2話の間では世界内で随分と時間が経過していたが、今回は前話のラストシーンからの直接の続きとなっている。

 冒頭、前回のラストシーンで現れた「調査部」が、Gセルフアイーダの引き渡しをキャピタルアーミィに要求するという、なかなか政治的にキナ臭い所からスタート。アーミィが1週間かけてもGセルフ調査において成果を得られなかった事を盾に、要求を通すクンパ大佐。が、その後

キャピタルアーミィをでっち上げた黒幕のくせに」

という台詞から、基本的にはクンパ大佐がマッチポンプかけてるだけだという事が分かる。
 Zガンダムからお得意(?)の、1つの組織の中に複数の内部組織を持ち、それらが互いにパワーゲーム中、という富野アニメの設定だ。これに対し「海賊」が組織的しがらみを持たない独立愚連隊として対比される事になるのか?と予想もできるが、海賊の方もあっちはあっちで組織的キナ臭さがあるので何とも言いがたい所だ。

 その後、Gセルフごと船で移動。ここでビームライフルの砲身の先を枕に眠るラライヤのカットが面白い。

 ここでも人とロボットのサイズ的対比が丁寧に描かれていると同時に、前話で人の命を奪ったばかりの「兵器」を今話ではサラリと枕という日常道具として使ってみせている。「兵器」や「道具」に対して単純化した捉え方はさせてはくれないのだ。
 このシーンでは捕虜として拘束された状態で堂々と眠るアイーダポンコツ姫っぷりも面白いし、ベルリの肩に頭をのせて眠るノレドも可愛い。そしてその中で眠れずにいるベルリ。このように、こうした僅かなシーンの中でも各キャラの性格や現在の心情を細かく描写している事が分かる。

 自宅に着き、ノレドに「家に帰れ」と言うベルリ君と、それをガン無視で家に上がり込むノレドちゃん。ここで言い争いにならず、追いかけるノレドを見て「まあ良いか」と特にベルリが何も言わない、というのも台詞外のコミュニケーションとなっていて良い。
 帰宅したベルリ君は早速母親にアイーダの開放をお願いする。ここの一連のシーンで、富野アニメ的にはイレギュラーな良好な親子関係が描かれる。ように一見見えるが、ちょっとここで少し詳しく考えてみたい。ベルリの親子関係については後で別項で語る予定。

 場面は変わり、ここで今話の主役(?)のクリム・ニックが登場。もうこの時点で素晴らしすぎるくらい素晴らしいのだけど、クリム君についてもまた後ほど。

 一夜明けて家を出て大佐の元に向かうベルリ君に、またもや無理矢理くっついていくノレドちゃん。ノレドはベルリに「連れて行って」と頼んでもどうせ断られるに決まってるのが分かるから、不意打ち気味にベルリの後ろに飛び乗る。ベルリの方もここで何を言ってもノレドが降りる気がないのが分かっているから少しだけ愚痴るだけでノレドには何も言わない。会話の噛み合なさに注目されがちなGレコだが、このように会話が無くてもちゃんと「会話」が成り立っている、というコミュニケーション描写も描いているのだ。
 で、ここのシャンク移動中に交わされるベルリとノレドの会話が何だか本当に好き。何だか泣きそうになる。このシーンの何に感動しているのか自分でも上手く言えないが、何なのだろうこの爽やかさは? 今話でも特にお気に入りのシーン。


「好きになったんだろ!?」「黙れえええええええええ!!」

 クンパ大佐の元に着いたベルリとノレド。「ベルは恋してんです」とここでもチクリと言い出すノレドだが、アイーダに対する敵対意識がベルリへのちょっかいという形で発散しているという訳か。それに対し「一目惚れかな?」とちょっとその話題に乗ってみせるクンパ大佐には、大人の余裕めいたものが見える。
 で、当のアイーダと言えばここで何故か踊りながら登場。

 ここのアイーダダンスシーンは正直言ってどういう意味か分からず、単なるギャグシーンとして脳内処理してみたくもなるが、こうした意味不明なキャラの言動が多少存在する所にこそ、キャラクター達が独立した生きた存在である事の表れとも言えないだろうか。人の行動なのだから、その全てが他人に理解できる訳では無いのだ(というのは贔屓の引き倒しか?)。
(ちなみにこのシーンに対する坂井哲也氏http://tominotoka.blog.so-net.ne.jp/2014-10-13の考察が面白い。なるほど)
 そんな中に錯乱状態で現れるラライヤ。

 ノレドの「どした?どした?」という台詞が声優の演技も相まって大変魅力的だが、ここのシーンで少し注目したいのが、ラライヤがまずベルリの名前を呼んでいる点。
 ここに至るまで、正直言ってベルリとラライヤの間にそこまで交流らしい交流は無い。にも関わらず何故ラライヤがベルリを頼るのかと言えば、それはラライヤの面倒見係であるノレドが、ラライヤに対してベルリの事を日常的に話していたからではないだろうか。ノレドが前々からベルリの事を「いざって時は頼りになるんだー」とかラライヤに対して惚気てた、と考えると実に萌える訳で、この読みは如何だろう?

 何やかんやと落ち着いた所で、昨夜の「カーヒル殺し」についての話を始めるベルリとアイーダ。昨夜は錯乱して詰め寄られるだけだったベルリだが、一夜明けて冷静になったのか、ここではアイーダに「先に攻めてきたのはそちらのはず」というニュアンスの台詞を返す(というかそこから始まる。情報圧縮)。アイーダの方もそこまで感情的ではない。そして話は自然と世界情勢論へと移る。


アイーダ「エネルギーと道具は、道徳的に正しい使い方ができれば…!」
ベルリ 「それができなかったから、人類は宇宙世紀に全滅しそうになったんでしょ!」 

 この下りもこのアニメのメインテーマの1つとなるのだろう。Aパートで「ビームライフルを枕に眠るラライヤ」が描かれていたのは、おそらく偶然ではない。
 そしてそこで二人の会話に横からカットインするクンパ大佐。話を繋げているようで、さり気なく自分の話したい内容に話題をシフトさせている所が老獪だ。前話でお互い話したい事だけ話して会話の噛み合なさを見せたベルリとアイーダを思うと、年の功を感じさせる。

 さてここから戦闘パート。1、2、3話と続けて「BパートはMS戦」という構成になっており、これが作り手側が自分達に課したルールっぽい。
 MS戦ではモンテーロがサブタイトル通り今話の主役。ここまでの登場MSの中ではようやく既存の格好良さを比較的意識した感のあるMSだが、顔面アップを見てみると、これまたちょっと面白いデザイン。

 ここで実際にデザインを担当した形部氏のツイートを引用。

 また今話ではモンテーロのシーンに合わせて動物達が多数出現して絵的に大変楽しい。また、絵的な面白さだけでなく、MSがただ飛行するだけで動物達には大事件となる、というのが描写されている訳で、ここでもMSの大きさが強く表現されている。

 で、モンテーロカットシー舞台の戦闘にベルリアイーダ御一行は4人揃ってGセルフで参戦。捕虜が平気でMSに乗って出て行くのだが、この流れ自体は明らかにクンパ大佐が意図的に逃がさせたものと考えるべきだろう。
 そして彼らが出撃後に初めて行ったのは、戦闘ではなく被弾したケルベス機の救助なのだ。「道徳的に正しい使い方」をやってみせた訳だ。

 クリムはアイーダ救出のため(という名目?)で攻めてきたので、アイーダが間に入る事で戦闘終了。そしてそのままアイーダはベルリ、ノレド、ラライヤと共に海賊の母艦へと帰投。そこに驚くノレドらだが、そこは流石に能天気だろう。彼等の明日はいかに?という所で今話は終了。と思いきや、今話最大の問題シーンが最後の最後に挿入される。ヒロイン3人に囲まれての主人公ベルリ君の脱糞シーン。クリム君が「奴め! 本気か!?」と、今日1のカッコイイ台詞を吐くが、あくまで脱糞する主人公へのツッコミだ。

 Gレコのトリッキーっぷりを象徴するかのようなシーンで終了。さてこのアニメの明日や如何に?

という訳で長めに語っておきたいシーンはその2で。